診療科
高血圧内科
高血圧は日本に4,300万人いると推定される最も多い生活習慣病です。
高血圧はありふれた病気ですが、循環器疾患の最大の危険因子であり、適切な診断と治療が最も重要です。高血圧内科では、日本高血圧学会による高血圧治療ガイドラインに準じ、的確な治療方針の決定とエビデンスに基づく治療を行います。
血圧には季節変動や日内変動がありますので、1年中同じ降圧薬や用量を服用している患者さんは少ないと思います。これらの変動に加えて、透析患者さんは、透析日と非透析日の血圧も大きく変動しますので、積極的に家庭血圧測定を勧めて、降圧剤や服用時間を決定しています(当院では、家庭血圧計を持っていない患者さんでも血圧を評価できるまで、貸し出しを行っています)。
診療について
治癒可能な二次性高血圧の鑑別を確実に行うとともに、糖尿病や肥満など他の危険因子の有無の確認と、脳・心・腎など臓器障害の評価を行って治療方針を決定します。治療に際しては、治療の目的や非薬物療法、薬物療法の意義について十分に説明して納得を頂く診療を心がけています。
非薬物療法(生活習慣の修正)に関しては、高血圧治療ガイドライン(2019年度版)で生活習慣の修正項目として、以下が掲げられています。
- 食塩制限
- 野菜・果物の積極的摂取と飽和脂肪酸、コレステロールの摂取制限
- 適正体重の維持
- 運動療法
- 節酒
- 禁煙
これらの生活習慣の複合的な修正はより効果的であるとされていますので、管理栄養士や理学療法士とともに患者さんのライフスタイルに合った個別指導を行います。
薬物療法に関しては、一般に、降圧薬は単剤を少量から開始して、降圧効果が不十分でない場合には増量するか、もしくは他の種類の降圧薬を少量で併用したり、服薬時間を変更したりします。血圧の変動を評価するためにも、医療機関での血圧値だけを参考にするのではなく、可能な限り患者さんに家庭血圧を測定してもらい、個々に評価します。
透析中に血圧が低下する場合
透析前日の夜や透析日の朝の降圧薬の確認・調整や透析中の昇圧剤の検討も大事ですが、まずは、基準体重が正しいかどうかの評価が必要です。当院では、浮腫の確認、胸写での心胸比測定やインボディでの理想体重の評価、心臓エコーでの心機能の評価を行い、日常生活動作(ADL)の改善だけでなく、心不全や肺水腫、心血管病発症を防ぐためにも透析患者さんの現状に応じた基準体重を定期的に評価するようにしています。
一方で、透析中に血圧が上昇する場合や透析前の血圧は高値ですが、穿刺後すぐに血圧が低下する場合も少なくありません。血圧の程度によりますが、透析中に血圧を下げる薬剤を一時的に使用するケースもありますが、非透析日の血圧や透析日の起床時の家庭血圧を測定してもらい、降圧薬が本当に必要かどうかを検討しています。
検査について
- 心臓エコー
心臓の動きや心肥大、弁膜症の有無、心機能の評価を行います。 - 頸動脈エコー
頸動脈肥厚の程度やプラークの有無で血管のつまり具合を評価し、脳血管疾患に対するリスクを調べます。 - 腎動脈エコー
腎動脈狭窄の有無や腎臓の中の血流などを評価し、高血圧症の原因や、腎臓機能低下の原因を精査します。 - 脈波伝播速度検査
血流の速度から血管壁の硬さ(動脈硬化の程度)を評価します。 - CT・MRI検査
連携医療機関にて、頭部では無症候性脳梗塞の有無などを、胸・腹部では大動脈瘤の有無、腎臓や副腎の形態などを調べます。 - 眼底検査
連携医療機関にて、眼底血管の高血圧、動脈硬化および糖尿病による変化を調べます。
ほか、二次性高血圧にはさまざまな原因となる疾患がありますので、ホルモン採血(レニン活性、アルドステロン濃度、カテコラミン3分画、甲状腺ホルモン、コルチゾールなど)による、病歴・症状・身体・検査所見などから原因疾患を推測して、適宜、鑑別・診断確定を行います。
※本院における高血圧内科は、透析をされる外来・入院患者さんの日常生活をサポートするのが主な役割であり、限られた診療時間内で医療相談や治療を行っております。